おすすめ小説 7
「バルセローナにて」 堀田善衛著
著者は、1977年の秋からスペインに住んでいます。
この書はそれから10年に及ぶスペインの生活を滞在記のようにして小説化したもの。
3編ともその土地の人物との交流を主にした物語ながら、さながらスペインの歴史と地理の案内みたいになっていて、私はその土地を訪ねる時には必携するつもりになりました。
「グラナダにて」は、現在の人物との交遊を主にしたのではなくて、スペインの全土的な統一を実現したイサベル女王とその娘のフアナ王女の生き方を再構成した歴史小説という趣をとっています。
グラナダのアルハンブラ大宮殿の右に沈む夕陽を眺めながら、狂女王ともいわれたフアナの時代に思いを馳せる堀田氏の文章は美しいです。
1500年ごろのことです。
フアナは女王になって後に、父の手によって城塞に幽閉され、実に46年間の歳月をそこで過ごすことになったというのです。
「それは、スペインの歴史にとっては、もっとも栄光に満ちた一時代なのであった。
この時、スペインは空前絶後の、ローマ帝国をもしのぐ、世界史に最大規模の世界帝国を築いたのであった」。
フアナ女王は結局、何もしない、一切の決定決断をしない、ということでスペイン国の繁栄を保持し続けた、と著者は言うのです。