おすすめ小説 5
「惑星の午後に吹く風」 三木卓著
これは未来小説というのか、SFというのか、と私は読了して思いました。
ところが「あとがき」に作者は「実質が確かめられることからしか作品をスタートさせることできないわたし」の書くものは、すべて私小説である、と言っています。
つまるところ、作家三木卓の頭の中に去来する、人生とは何か、宇宙とは何か、そして人間の存在とは何か、という設問に対するさまざまな思いを、この作品になんとか定着しようとした哲学的な、空想科学小説ということになるでしょうか。
ただ、そういうとなにか七面倒くさい難かしい小説みたいに思われるので、私は一息に読んで面白い作品だったと急いで付言しておかねばならないでしょう。
今よりずっと時間のたった将来の或る日、国立自然保護区の係員のチャンチンが、奥の部屋にいるアマリアの所にユリの花をとどけます。
アマリアという若い女性は、二十一世紀初頭の人間でしたが、自らすすんで冷凍人間となり、それが南極で発見されて、注意深く解凍されて今に生き返ったということです。
つまり、未来のある時点から現代を見るという視点をここで定めているわけです。