おすすめ小説 3
「市塵」 藤沢周平著
新井白石の生涯を描いたこれは歴史小説です。
白石は江戸時代半ばの学者であり政治家ですが、その生涯は波乱に富んでいました。
若い時は、土屋家と堀田家に出仕しましたが、いずれも長い勤めにはなりませんでした。
家塾を開いて妻子を養っているときに、甲府藩に召しかかえられることになるのですが、その時の俸禄は四十人扶持であるといいます。
甲府の藩主綱豊に儒学を講じている間に、藩翰譜という書物を著わしたりしていました。
ところが綱豊が六代将軍家宣となるに及んで、白石の運命も大きく変わることになります。
白石の政治や外交に関する意見が、幕府中央のものになったのです。
五代将軍綱吉の、例の悪名高い生類憐れみの令を取り消すことから家宣の政治は始められたみたいです。
噛みつく犬を切ったことで切腹を命じられた武士がいた、というような、むちゃくちゃな悪法でした。
六代家宣は、側近の間部詮房と白石を重用しました。
その政治は綱吉時代の政治の歪みを正道にもどすことにあったのですが、家宣は将軍の座わずか四年足らずで死去します。
さらにその後を継いだ幼い家継も三年ばかりで早逝しました。
白石の活躍した時期は七年余ということになるのですが、為しとげた仕事の量は大きく、多岐にわたっています。
朝鮮使節の待遇改善、金銀貨幣の改鋳、ローマから潜入した宣教師シドッチの訊問などです。